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高松高等裁判所 昭和24年(控)485号 判決

被告人

岸田茂夫

主文

原判決を破棄する。

本件を原裁判所に差し戻す。

理由

職権で調査すると原判決はその理由で「被告人は昭和二十三年十一月二十一日頃より同年十二月二十五日頃迄の間に十二回に亙り香川縣仲多度郡善通寺町大字善通寺二百五十六番地なる自宅において同人が他から窃取した女物銘仙、錦紗生地三十三反男物冬服生地十着分女物羽織二枚及び男物マフラ一枚を其賍物であることを知りながら代金六万七千円で買受け、以て賍物の故買をしたものである」と判示しこれに刑法第四十五條前段の併合罪の規定を適用している然し併合罪の関係にある複数の犯罪行爲を判示するには、その行爲が同一罪質であつても各個の行爲の内容を一々具体的に判示し一の行爲を他の行爲から区別し得る程度に特定し各個の行爲に対し法令を適用するに妨げない程度に判示するを要するものと言わねばならぬ、然るに原判示によれば十二回に亙る賍物故買行爲のあつたことと、その始期及終期だけは判るけれども各個の故買行爲の内容とその時期は原判決挙示の証拠を参照してもこれを窺い知ることができない、即ち原判決は各個の犯罪行爲を区別することができず法令を適用すべき基礎が不明であるから判決の理由を具備していないものと言わねばならぬ、尤も本件起訴状の公訴事実の記載もまた原判決の判示と大同小異であつてその記載は到底刑事訴訟法第二百五十六條にいう訴因を明示して記載したものとは云えないがこの不備は裁判長において檢察官に対し釈明を求めて訴因の追加変更を促し又は裁判所において審理の経過に鑑み訴因の追加変更を命ずることにより補正せられ得るから直に公訴提起の手続を無効であるとまでは解しない、以上の理由により控訴趣意に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七條第四百條に則り主文の通り判決する。

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